対象

小学校低学年(日本語で日常会話ができる)以上

セット内容

カード60枚(動詞30語×2枚)

使用動詞(マス形)

同じ音(読み)で意味の異なる動詞を扱っているため,漢字を使って紹介します。
カードでは,動詞はすべて【ひらがな】です。

あけます(開けます,空けます)

うつします(写します,移します)

かわきます(渇きます,乾きます)

とけます(解けます,溶けます)

のります(乗ります,載ります)

あげます(上げます,挙げます)

さします(差します,指します)

すすめます(進めます,勧めます)

たちます(立ちます,建ちます)

つきます(付きます,着きます)

あらわします(表します,現します)★★★

おります(下ります,降ります)★★★

こたえます(応えます,答えます)★★★

とめます(止めます,留めます)★★★

はかります(測ります,計ります)★★★

(注)聞き分けが簡単な動詞(難易度低:★)← →聞き分けが難しい動詞(難易度高:★★★)

ちゅうい

  • 誤飲の可能性がありますので,3歳未満のお子様には与えないでください。
  • 火災の原因になりますので,火に近づけないでください。
  • 紙製品のため,水に濡れると変形する可能性があります。

作成者のおもい

 この教材をつくるきっかけになったのは,校長として勤務していたA小学校の4年生に編入学して来たBさんとの出会いです。Bさんはご両親の都合で日本に来ましたが,挨拶程度の日本語しか話せませんでした。私にとっても当時の在籍校にとっても,日本語指導が必要な児童の受け入れは初めてのことでした。A小学校には日本語教室は設置されておらず,日本語の巡回指導の対象でもなかったため,校内のマンパワーだけでなんとか乗り切るしかありませんでした。Bさんをどのように支援すれば良いか見通しが立たない中で,学級担任を中心として,教職員と試行錯誤を繰り返しました。私もBさんを校長室に取り出して,サバイバル日本語指導を行いました。Bさんはコロナウイルス感染拡大の為にすぐに帰国してしまいましたが,日本にいる間は片言の日本語ですぐに友達をつくり,幸い学校生活に馴染むことができました。

 このBさんに関わった経験をとおして,日本語指導が必要な児童が日本の学校に通うためには,本人や保護者の努力だけでなく,学校の支援が大切であることを実感しました。しかし,支援を行いたくても,学校には日本語指導が必要な子供のための十分な環境支援,人材配置がなされていないのが現状であり,A小学校のように現場のマンパワーだけで乗り切らねばならない学校も少なくありません。その結果,最近では日常会話には問題がなくても,学習に参加することが難しい状況にある児童の指導が問題化しています。


 そこで,子供ができるだけ早く,少しだけでも在籍学級の授業に参加できるようになるための教材「いみあわせかあど」を開発しました。「いみあわせかあど」では,小学校の先生達が授業の中で,子供達に説明したり指示をしたりするときによく使う動詞を取り上げました。小学校の授業に参加するためには,授業者である先生の言葉を聞いて理解することが第一歩だと考えたからです。また,カードゲーム形式を採用し,子供が遊びながら自然と言葉を身につけられるように工夫しました。「いみあわせかあど」だけで授業中の言葉を全て網羅することはできませんが,子供が授業中に「聞いて分かる言葉」を増やすきっかけになればと願っています。

福島 貴子


監修者の願い

 いみあわせかあどは,福島さんの修士課程の研究成果です。福島さんが修士課程に通われた2年間は,大学をはじめとする教育機関全てがCOVID-19対応に多くの時間を割いた時期と重なります。管理職として働いていた福島さんも例外ではなく,勤務時間外にもCOVID-19対応に追われていました。その中で,何度も何度も私にダメ出しを喰らいながら,プロトタイプを完成し,その有用性を検証し,プロトタイプの改善点を明らかにし,2022年1月に研究活動は無事終了しました。

 しかし,評価協力校の先生から頂戴したコメントの中に「紙が薄くて遊びにくい」という感想があり,当初プロトタイプと同じ材質の完成品を配布する計画が実行できなくなりました。私が教育工学者を名乗っている以上,遊びにくいと指摘のあった材質で作った完成品は配布できないと考えたからです。2021年冬,学内の産学連携コーディネータの吉本さんに相談し,学内助成に応募したり,企業に声をかけたり,いろんなことをしましたが全て失敗に終わり,最後の手段である学内公募のクラウドファンディングに望みを託しました。クラウドファンディングではたくさんの皆さまから多大なるご支援をいただき,目標額以上の寄付を頂戴することができました。そして,クラウドファンディングを通して,皆さんが送ってくださった応援メッセージのおかげで,地元の教材会社である文溪堂の水谷社長が販売の協力を申し出てくださいました。いみあわせかあどは東海国立大学機構の法人著作物として登録しているため,契約締結までにも色々とありましたが,2023年9月無事契約締結し,いみあわせかあどの一般販売が決まりました。これに伴い,クラウドファンディングで頂戴した寄付で制作するいみあわせかあどは,当初目標数の200セットの4倍以上となる850セットとなりました。850セットはギフト,研修教材を除いた分全てを教育機関を中心に配布いたします。

 いみあわせかあどがサポートできる範囲は限られていますが,日本語指導が必要な子どもたちが先生の話す言葉を1つでも「知っている」に変わってほしいと願いながら,いみあわせかあどを送り出したいと思います。

 最後に,完成品のイラスト,パッケージデザイン,ロゴは,ミナミカズヒロさんに作成をお願いしました。ミナミさん,素敵なカードに仕上げてくださり,ありがとうございました。また,岐阜大学の吉本さん,大岡さん,牧野さん,西田さん,野原さん,文溪堂の馬渕さん,石黒さんには大変お世話になりました。皆さんのご協力がなければ,いみあわせかあどはこのような形にはなりませんでした。そして,クラウドファンディングで応援してくださった皆様,本当に本当にありがとうございました。

東海国立大学機構 岐阜大学教育学部
教授 今井 亜湖


デザイナーからのご挨拶

 はじめに、素晴らしい教材である「いみあわせかあど」のイラスト制作やパッケージデザインに携わらせていただきましたことを、今井先生と福島先生に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 私は日々の仕事で、何か社会に貢献できることを模索し、それが仕事にもつながることを願っておりました。そこで、「KuKuKeKe」というフリーイラストサイトを立ち上げました。今井先生とは面識はありませんでしたが、ある日お問い合わせをいただき、「いみあわせかあど」に使用するイラスト制作のご相談をいただきました。このプロジェクトの趣旨を知った時、とても社会的意義が大きく、素晴らしいツールであると感じました。そしてイラスト制作の貴重な機会をいただくこととなりました。

 イラスト制作を通じて、今井先生や福島先生が「いみあわせかあど」を通して日本語学習に苦しむ子供たちに寄り添い、熱心に行動している姿勢を知り、私も「いみあわせかあど」がより良い教材になるお手伝いができればという思いを込めて、制作を行いました。また、制作の進行においても、先生方からのご配慮が多く、非常に協力的な関係を築けたことに感謝しております。

 「いみあわせかあど」には、先生方をはじめ、クラウドファンディングなどで支援してくださった多くの方々の想いが詰まっています。このカードができるだけ多くの子供たちに届き、成長されることを願っています。

ミナミ カズヒロ